国際渉外とは何か

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みなさんは、「国際渉外」という言葉をご存知でしょうか。

日本企業の海外進出やビジネスのグローバル化が進むなか、この「国際渉外」の活動が企業にとってもより重要になっているにもかかわらず、おそらくこの言葉を見聞きしたことのある方は少ないのではないでしょうか。

国際渉外とは、一般的に、「政策企画」「公共政策」と言われるような(英語ではpublic policyなどと呼ばれます)、企業が自らの事業環境整備のために、さまざまなステークホルダーと連携しながら、国の政策立案やルールメイキングに積極的に参画していく活動の国際版です。そして、この国際渉外には、2つのパターンがあると考えられます。

1つは、進出先の国の政府に対して行うパターン、もう1つは多国間の政策立案やルールメイキングに参画していくパターンです。いずれも企業による事業環境整備であり、また、官民セクターとのステークホルダー連携が必要であることは共通しています。

これまでも、日本企業はこのような国際渉外活動を直接的または間接的に行ってきましたが、グローバルなネットワークであるインターネットの普及、そして、それに基づく多様なビジネスの登場が、この国際渉外の重要性をますます高めています。

インターネットの特徴は自律・分散・協調の相互接続ネットワークであり、そのようなインターネットに基づくビジネスの最大の特徴は、即時性と遠隔性があることです。本来的に国境を意識しないインターネットは、日本企業が外国のユーザーに対して円滑にさまざまなサービスを提供することを可能としました。

しかしそれは、同時に、サービスをめぐる諸問題も国境を越えるものに変化させ、もはや国内のみに焦点を当てた政策やルールメイキングのみでは不十分な状況を創り出しました。この結果、例えば、自国の国内法の域外適用を進める国や、自国領域内で事業を行うための条件として、当該領域においてサーバ等の利用・設置を要求する「データローカライゼーション」を国内法に規定する国が出てきています。デジタル経済がさらに進展することによって、一定の国が国外から提供されるインターネットビジネスを自国法で縛るといったことや、現在も世界貿易機関(WTO)や経済連携協定(EPA)・自由貿易協定(FTA)といった通商交渉の場等で進められているような、国際的なルールメイキングが今後さらに活発化していくでしょう。

このような時代の中で、企業はただ作られていく国外のルールを所与のものとして守り、「相手に敷かれたルール」の上で競争し、日本の実情に則さないルールへの対応コストを増やしていくだけで良いのでしょうか。ここに、国際渉外活動の重要性があり、いわゆる米国の「Google, Apple, Facebook, Amazon(GAFA)」のみならず、中国の「Baidu, Alibaba, Tencent(BAT)」といった巨大IT企業は、日々二国間・多国間の政策立案やルールメイキングに積極的に関与しています。とある国際会議において、表では、ワークショップを含むさまざまなセッションに参加しつつ、裏では、拘束力あるルールメイキングの国際交渉に参加している国の政府関係者と会談を行っている企業の関係者を見かけるケースは、枚挙に暇がありません。翻って、インターネット分野でこうした活動を行っている日本企業はほとんど存在しません。実際、毎年開催されている「WTOパブリックフォーラム」や国連貿易開発会議(UNCTAD)の「eCommerce Week」、国連の「世界情報社会サミット(WSIS)フォーラム」や「インターネットガバナンスフォーラム(IGF)」等、民間セクターが参加できる国際会議であるにもかかわらず、日本企業はほとんど見かけません。この結果、他国や国際機関からは、「日本の産業界の顔が見えない」とか、「日本政府の国際交渉における主張は、日本の産業界の意見に裏打ちされたものなのか」といった声が寄せられているようです。日本の産業界がこのまま対外的に沈黙を続ければ、日本の外交力そのものにも影響を与えかねないでしょう。

1億人超の日本のマーケットが今後縮小していく中で、世界には70億人超のマーケットがあり、今後も世界人口は増えていくでしょう。日本企業は、生き残りをかけて世界に打って出ていく必要があります。そのような状況の中、相手に敷かれたルールの上で競争するネガティブなコストに資金を費やし続けるよりも、自分のルールの上で有利に競争を進めるためのポジティブなコストに資金を費やす方が、何倍も意味があります。より多くの日本企業において国際渉外を担当する部署が作られ、二国間・多国間の政策立案やルールメイキングの場に積極的に参画し、日本政府と連携しながら自らに有利なグローバル・ルールメイキングを行っていくことを願います。

最後に、インターネットは民間主導のアーキテクチャーであり、その政策立案やルールメイキングも本来民間が主導すべきこと、そして、国際的なルールメイキングの場において、日本の官民セクターの緊密な連携が必要不可欠であることを付言します。 

(望月 健太)