次の成長戦略と、政策形成におけるベンチャー企業の役割(後編)

 

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見当違いの議員に行っている印象、どの順番でどこに当たるかも重要

夏にメルカリが実施したパネルディスカッション『次の成長戦略と、政策形成におけるベンチャー企業の役割』

イベントを通じて最も踏み込んで発言をしてくれたのが、政治家代表として参加してくれた平 議員でした。

今回のテーマの一つが「成長戦略」でしたが、平氏は、ここ2年連続で自民党の成長戦略の立案を担った方でもあり、内閣府副大臣で国家戦略特区や地方創生、IT戦略、宇宙戦略、クールジャパンと幅広い分野を担当した経験からも、ベンチャー企業がどう政治に関わるかについて話してくれました。

冒頭から「見ていて間違ったところに行っているなという印象がある。ベンチャー企業の皆さんも忙しいだろうからピンポイントでアクセスしていくことが重要。」と指摘。

これについてモデレーターの佐別当氏が、「間違ったところにという話があったが、国会においては例えば、政権を動かしているのは与党ということもあるし、省庁で言えば、規制省庁に直接行って「Yes」か「No」かと聞けば、「No」としか言いようがなかったりもする。どの順番でどこに当たっていったらいいのかも重要だったりする。」と補足するなど、これまでのベンチャー企業経営者や社員にとっては、出だしから「そうだったのか!」と思わされたのではないかと思います。

 

大陸法には「やっていい」とは書いてないので、規制省庁は『やっちゃダメ』と言う

平氏は、またベンチャー企業などの働きかけの失敗について、「イノベーションが起きて新しい制度を社会実装しようとして法律を見ると『やっていい』とは書いてない。すると行政は保守的に判断するので、規制省庁は『やっちゃダメ』だという。」と紹介、この背景についても、「アメリカやイギリスは英米法なので『やっちゃいけないこと』が書いてあるので、新しいテクノロジーができた際に、向こうのベンチャー企業は『やっちゃいけない』と書いていないので、とりあえずやる。それで後は訴訟で戦うということになる。一方で、日本やドイツは大陸法なので『やっていいこと』が書いてある。すると新しいテクノロジーはそもそも想定されていないので『やっていい』とは書いていない。大企業はコンプライアンス遵守でフリーズする。そのためベンチャー企業自身が頑張らなければいけないのだが、ベンチャー企業はどこに何を言ったらいいのか分からないというのが現状ではないか。」と、なぜ日本において新しいことをしようとすると常に反対されるのかという根本を「法律の立て付けがある」と説明してくれました。

「政治家ってなんか凄く悪そうだし、献金とか求められそうだし、となって身構えられることがあるが、実際には映画やドラマに出てくる政治家ほど、本当の政治家は悪くないし、ワイドショーで言われているほど馬鹿でもない。バラエティ番組などにも呼ばれるが、芸人などと議論して負けるわけがない。それが、ワーって言われている所だけが切り取られ、言い返した所がカットされるので視聴者の印象が悪くなる。」と多くの国民がなぜ政治家を悪い印象で捉えられているのかについても笑いを取りながら紹介されました。

 

大陸法の中で実現するのに重要なのが規制改革

「政治家っていうのはかなり勉強もしているし情報量も多いので、優秀な人が多い。ただ英米法ではなく大陸法の国の中でそれをどうやって実現していくかが求められる。その中では規制改革が重要になる。その規制改革の中で強力なツールになるのが国家戦略特区だが、これも加計問題の中でフリーズしてしまっている。国家戦略特区でさえ改革のスピードがまだ遅いと、昨年提案し今年の国会に出したのがレギュラトリーサンドボックスだった。」という話には、あらためて規制改革の必要性を感じた方も多かったのではないかと思います。

また、「サンドボックス制度」制定の過程においても、「プロジェクト型の規制のサンドボックス制度と、エリア型の規制のサンドボックス特区制度を提案したが、エリア型の方は通らなかった。こうした所にも加計問題が影響している。」と紹介されました。

もう一つの本題である「政策形成におけるベンチャー企業の働きかけ方」については、「規制省庁への働きかけは、運営の方は規制省庁でもいいが、イノベーションの実装で、『そんなのどこにも書いてません』というものは、規制改革や成長戦略をやっている国会議員に持って行った方がいい。成長戦略に取り組んでいる国会議員ってどんな議員かと言えば、選挙が強く、政党の主だった団体とも喧嘩ができる人たちだったりする。どの分野でもそうだが、例えばシェアリングエコノミーなど新しいビジネスモデルを進めようとすると、必ず既存の事業者たちは反対する。こうした際にも日本経済をマクロ視点で考えて行動できる議員が重要になるし、ちゃんとそこにアクセスすることが最も効率がいい。国会議員は数多くいるが、実際に政府の成長戦略に関わっている議員は少ない。国会議員に働きかけたが、パーティー券を買わされただけだったという声を聞くこともある。有名な議員や大物議員だから物事が動くという訳でもない。成長戦略に関わっている議員は自民党の中でも10人程度しかない。とくにこうしたベンチャー企業界隈の皆さんは、そこにちゃんとアクセスをして、それが単に業界のためではなく社会に貢献し今の社会課題を解決できるとちゃんと見極めることが大事だと思う。」と今回の本筋を丁寧に説明してくれました。

 

正しいアクセスが大事。日本のベンチャーも積極的に働きかけて欲しい

またベンチャー企業などIT業界からの働きかけのタイミングについても、「ロビイングのタイミングは色々あるが、最近で非常に上手く噛み合ったのがESG投資だった。GPIFの理事と6月に、日本はアベノミクスで外国からの投資が必要だがESG投資にコミットしていないと年金のお金が入って来ないという話を聞いた。GPIFでは140兆円もの年金運用を行なっているので、これを機能させることができたら面白いと、9月の安倍総理の国連関連での演説にも入れることができた。こうした取り組みが話を聞いてからわずか3ヶ月で実現した。イノベーションの分野においては成長戦略に入れるというのが効果的なので、2年連続で自民党の成長戦略を担当させてもらったが、毎年12月までに中間報告をまとめる。それを最終的には4月末に自民党の成長戦略になり、これがほぼ政府に入る。4月に提案して、法律を変えなくていいものは早ければ年内に変わるし、法律を変えなければいけないものは翌年の通常国会で行う。12月の中間報告または4月の自民党の成長戦略の前に、役職でなく実際に立案をしている人にインプットすることが大事で、刺されば書くので、政府の政策にも入ることになると思う。ロビイングの際にビックネームや政治家の名前を出す人がいるが逆効果。法律とか世界の流れとかイノベーションとか大体の所は抑えているつもりなので、コミュニケーションスキルのある人を出してきた方が良い。」と事細かに踏み込んで説明してくれました。

「岩盤規制はいくつか決まっており、それを壊すために国家戦略特区やサンドボックス制度を作った。例えば上限金利規制は利息制限法。日本はこれが先進国で一番厳しい。ヨーロッパも厳しいと言われるが、手数料を利息制限の外で取れる。FinTechにとって年利利息いくらというのはナンセンス。極端に言えば5秒ということもあるかもしれない。それを年利換算にすると超闇金になってしまう。例えば、トランザクションレンディングでプラットフォーマーがいて店子に出してあげるとやっていくと、政治家からしても岩盤規制崩してくれてるなとなる。もう一つ、中国では個人情報が使い放題になっており、AI、IoT、ビックデータという分野で、中国は14億人の国家戦略特区みたいなものと言える。日本や欧米では個人情報は保護されているので、同じようにはできないが、たとえば秘密計算技術を使えば色んなデータを入れても秘密を守りながらアウトカムが取れる。そういう提案がいただけると嬉しい。」とのことでした。

最後に「政治家は悪いやつでも税金泥棒でもなくローメーカーなので、結局、政治家が意見を聞いて調整をして成り立つ形にしていく。正しいアクセスをしてもらうことが大事。アメリカのセールスフォースやシンガポールのGICは頻繁に来るが、日本企業の働きかけはほとんど無い。是非積極的に働きかけて欲しい。」とエールを送られました。

 

今回の企画は、おそらく業界としてはじめての試みだったのではないかと思います。

こうした場に、登壇いただいたゲストの皆さん、とくに踏み込んで発言してくれた平議員に敬意を表すると共に、参加してくださった皆さんは勿論、今回こうした形で記事を読んでくれたベンチャー企業の皆さんにも、是非、こうした課題についても共有しながら、新たな取り組みにつなげてもらいたいと思います。

「merpoli」はじめ、メルカリ・メルペイとしても様々な専門性や経歴を持つ新たなメンバーが加わり、さらに積極的にこの分野を引っ張って行きたいと思います。

 

(高橋 亮平)



(登壇者プロフィール)

平将明(Masaaki Taira) 衆議院議員。早稲田大学法学部卒業後、家業を継ぐ。2005年、第44回衆議院議員総選挙にて初出馬・初当選。経済産業大臣政務官 兼内閣府大臣政務官(第2次安倍内閣)、自民党副幹事長、内閣府副大臣(第2次安倍改造内閣・第3次安倍内閣)を歴任。現在 は、自由民主党ネットメディア局長を務める。

松田洋平(Youhei Matsuda)

経済産業省・商務情報政策局・情報経済課 課長。京都大学卒業後、経済産業省に入省。産業技術環境局、大臣官房、商務流通G、 資源エネルギー庁、商務情報政策局などでキャリアを重ねる。2012年よりイギリスのウォーリック大学、ロンドンスクールオブエ コノミクス、中国の清華大学に留学。帰国後、経済産業政策局、大臣官房を経て、2017年7月より現職。

佐別当隆志(Takashi Sabettou)

一般社団法人シェアリングエコノミー協会 事務局長。2000年株式会社ガイアックス入社。広報・事業開発を経て、2015年秋より シェアリングエコノミーに特化したWebメディア「Share!Share! Share!」をリリース。2016年1月に、一般社団法人シェアリング エコノミー協会を設立し、事務局長に就任。2017年3月、内閣官房・シェアリングエコノミー伝道師に任命される。

城譲(Yuzuru Tachi)

元 株式会社メルカリ リーガルグループ マネージャー。国土交通省の役人として12年を過ごした後、楽天株式会社を経て2014年9月に メルカリに入社。 国土交通省時代には、まちづくり、防災、地域振興、航空行政など幅広い分野に従事するとともに、国連に出向 してアフリカで2年を過ごした経験もあり。楽天時代には、法務課長として、同社の多種多様なサービスに関わってきた経験を持 つ。

 

メルカリ政策企画では11月30日に虎ノ門でmeetupを実施します!

mercari.connpass.com

「政策企画meetup / Mercari Public Policy Meetup」
 ー 霞ヶ関 × ベンチャー の可能性 ー

時代にあった政策をどのように作っていくか。
ベンチャーが霞ヶ関とどのようにコミュニケーションを図るか。
ルールメイキング思考が、なぜベンチャーに必要とされるのか。

霞が関と民間の双方を経験してきたメンバーで、ロビーする側/される側の関係を超えて、新しいルールメイキングのあり方について、会場の参加者も交えて考えます。

取締役社長兼COO 小泉文明も来場します。

時間 スケジュール内容
19:00~ 受付開始
19:30~ 挨拶・乾杯(メルカリ小泉)
19:45~ パネルディスカッション
20:20~ 懇親会
21:00 イベント終了