インターンから見た「政策企画」のしごと

メルカリグループ政策企画に約一年間インターンとして参加し、merpoliに多くの記事を投稿いただいた浅野さんに、一年間を振り返って政策企画とはどういった仕事をしているのかを語ってもらいました。

インターンから見た政策企画の姿には、内部で働いていると気づかない示唆があり、いただいた原文をなるべく活かして記事化しています。

このため、メルカリグループや政策企画チームとしての意見を代表するものではないことにご注意ください。

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こんにちは、2021年度、メルカリ政策企画にインターンとして関わらせていただきました浅野潔志です。

この一年、メルカリ政策企画を一番近くで見てきた第三者として、「政策企画」とはどんな仕事なのか、私自身が体験したことや感じたことをご紹介したいと思います。

「政策企画」は比較的新しい概念であり、私自身も「政策企画って何やってるの?」という質問にうまく答えられなかった経験が多くあったためです。

政策企画の仕事の内容について、不正確になることを許容しながら、あえて簡潔に表現すれば以下のようになると考えました。

一つは、対国家との関係で民間企業が「法制度の運用」の機能の一部を担うことであり、もう一つは、対市民との関係で企業の属人的な信頼を向上させることです。

全ての企業活動は、世の中にニーズがあって、それによって企業に利益をもたらすことによって成立するものであり、「政策企画」も例外でないと思います。

この点を、意識しながら、「政策企画」とは何か、という問いに対してインターン生なりの答えを模索したいと思います。

 

Why なぜ政策企画なのか

対国家との関係

民間企業が「政策企画」を行う理由は、国家の側と民間企業側の双方に存在すると思います。

まず、法制度の運用のためのコストが大きくなったことによって、国家のみでこれを担うことが難しくなったことが挙げられます。

近年の科学技術の発展に伴う社会変化が目覚ましいことは言うまでもありません。そして、法律を「社会の中の利害関係を調整する仕組み」と捉えると、社会の変化によって利害関係のバランスが変化したときは、これに対応する新しい調整の仕組みを作る必要があります。特に、成文法を採る日本においては、社会の変化に対応するために、社会と法制度の齟齬を法律の運用によってカバーする必要性が大きいと私は考察しています。そして、社会の変化が著しくなればなるほど法律の運用の役割を担う行政及び立法の役割は増えていきます。

次に、法の運用が適切に行われないことは民間企業、ひいては社会全体にとって不利益となり得ます、

成文法主義を採る日本では、法律で明示的に許されていること以外はやってはいけないというポジティブリスト制度が採られやすいと考えられます。そして、法律の改正には、一般に、年単位での時間を要するため、社会と法制度の齟齬が発生してしまいます。

一方で、民間企業は、社会の変化に適合する、あるいは、社会に対して新しい価値を提案するプロダクトやサービスを提供したいと考えるはずです。社会と法制度の齟齬が、大きくなることは、このような企業活動にブレーキをかける要因となりえます。ここに、民間企業が、法律の運用にコミットする理由が生まれます。このような民間企業のモチベーションは、社会の変化を推し進め、イノベーションを起こす産業であればあるほど大きくなります。

 

対市民との関係

科学技術の発展はめざましく、これを利用したプロダクトやサービスは日々生まれます。しかし、どんなに画期的なサービスも「社会に受け入れられる」ことが必要です。

そして、これは私独自の仮説ですが、おそらく、新しいサービスが生まれるスピードよりも、社会がこれを受け入れるスピードの方が遅く、新しいサービスの提供は「社会に受け入れられる」ことがボトルネックになるのではないでしょうか。これを解決する方法の一つは、サービスそのものではなく、サービスを提供する主体が信用を得ることだと思います。つまり、ブロックチェーンやNFTといった最新鋭の技術を使ったサービスが現れたときに、「よくわからないけどメルカリが出してるから安心して使える」と思ってもらえるかが重要になると私は考えます。もう少し企業利益に着目した表現をすれば、対市民への「政策企画」とは、潜在的な顧客を増やす活動と言い換えられるかもしれません。

企業が社会的な信用を得るための活動としては、「プロモーション」や「ブランディング」という方法もあると思います。しかし、私が見てきた「政策企画」は、これらよりもさらに長期的な目線で活動を行っていました。極端な言い方をすれば、「民間企業を活用して社会にとっていいことをする」くらいのマインドを持った人間でなければ、これらの活動を信念を持って続けていくのが難しいという特殊性があると思います。

そのため、広報などとは独立した「政策企画」という仕事に価値が生まれます。

 

How どのように政策企画をするのか

民間企業が「法制度の運用」の機能の一部を担うとは、具体的には、以下のようなことを行います。

例えば、官公庁と密なコミュニケーションをとることによって、問題が顕在化する前に対処する。立法のための的確な情報(立法事実)の収集を補助するため、各庁の検討会などにコミットする。業界団体へ参加し、柔軟な対応を行いやすいソフトローの運用によって、法の強制力に寄らずに利益調整を図るといった方法が挙げられます。

対市民との関係で企業の属人的な信頼を向上させるとは、例えば、自治体との連携、寄付や教育活動といったソーシャルグッドへ積極的に参加する方法が挙げられます。

 

What 政策企画で何をしているのか

私が記事作成に関わった「政策企画」チームでの出来事を中心に、「政策企画」が何をしているのか、ご紹介したいと思います。

 

割賦販売小委員会へのコミット

割賦販売法の改正に係る割賦販売小委員会に、メルカリグループから「関係メンバー」として、青柳直樹 株式会社メルペイ代表取締役が参加し、さらに、第21回の会合では、吉川徳明 政策企画マネージャー(当時)が「後払いサービスの健全な発展に向けて」と題してプレゼンを行っています。

割賦販売法は、車や建家などの高額取引を念頭に置いて設計されていましたが、インターネット上の少額取引が活発になったことによって、牛刀割鶏な状態が発生していました。本改正は、こうした社会の変化に対応した例であると考えられます。

他にも、消費者保護に関する法律の改正に係る「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会」において、ヒヤリングへの回答した例があります。

 

メルカリ寄付

メルカリでは、2020年9月より、フリマアプリ「メルカリ」の売上金等を希望する自治体等団体や慈善団体に寄付できる「メルカリ寄付」の仕組みを提供しています。
「メルカリ寄付」は、メルカリが単に株式会社メルカリの名義で寄付をするのではなく、フリマアプリ「メルカリ」の機能の中で、ユーザーが手軽に寄付をできる「仕組み」を届けているところに大きな特徴があると思います。
このような仕組みは、メルカリを通じて日本に寄付文化を醸成したいと考える人が組織の中にいなければ実現させることは難しいのではないでしょうか。 

その他にも、自治体と連携して行う活動や、金融教育などをテーマに出前授業といった教育活動を行っています。 

浅野 潔志

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プロフィール

浅野 潔志(Kiyoshi Asano)

元メルカリ政策企画インターン。大学・学部時代は機械工学を専攻し、学生ロボコンに打ち込む。ロボット制作活動の中で、科学技術に親和的な法律家の必要性を感じ、法学部へ転向。2021年4月から2022年3月まで、インターン第1号として政策企画チームに参加。京都大学法科大学院にて法律を学びながら、merpoliの記事作成に携わる。