【2023新春企画 市長インタビューvol.2】西宮市長に聞く、メルカリとの連携によるごみ減量の取り組みと今後の施策

今年のメルカリの政策企画ブログ「merpoli(メルポリ)」は、年始からメルカリとの連携により社会課題解決の取り組みを行わせていただいている首長たちのインタビューをお届けさせていただいています。

2023年は、これまで取り組んできた自治体との連携による社会課題解決の取り組みをさらに深堀りし、自治体との連携をさらに深めていくことで、新たな可能性を見出していければと思っておりますので、是非お読みいただければ幸いです。

第2弾は、西日本初の取り組みとして、昨年10月24日から「メルカリShops」による粗大ごみ販売の実証実験を行っている西宮市(兵庫県)の石井 登志郎 市長のインタビューをメルカリ政策企画マネージャーの布施 健太郎が行ってきました。

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石井 登志郎 西宮市長

 

西日本で初となる「メルカリShops」での粗大ごみの販売 

布施 健太郎 メルカリ政策企画マネージャー(以下、布施)> 西宮市とメルカリ、ソウゾウは、今年10月にリユースに関する連携協定を締結し、西宮市は市民から排出された粗大ごみのうち再利用が可能なものについて、「メルカリShops」で販売実証実験を開始しました。今回の取り組みに至った背景を教えてください。

石井 登志郎 西宮市長(以下、石井市長)> 西宮市では、粗大ごみ収集の受付を市直営のコールセンターで実施していたのを委託に切り替えて受付日や時間を増やすとともに、スマホアプリでの受付も開始しました。市民サービスとしては拡充したのですが、コロナの影響で家で時間を過ごし断捨離する人が増えたということもあり、粗大ごみの受付件数が増えて、収集が1か月先になってしまうという状況になっていました。

早急にこれを解決する必要があったので、今回メルカリさんとリユースに関する連携協定を締結させていただいたという経緯があります。

また現在、市のごみ焼却施設が2つあってこれを統合する計画なのですが、処理量を減らせば建設費も安くなるということで、何とかさらにごみを減らせないかとも考えています。

西宮市の粗大ごみ処理場 

布施> この取り組みは、全国放送のメディアでも多く取り上げられるなど注目され、メルカリにも他の自治体からいくつもの問い合わせをいただいています。西宮市では22商品を出品して、うち20商品がすでに販売されました(1月1日現在)。市民からの反響はいかがだったでしょうか。 

石井市長> 多くのメディアに取り上げていただき、こちらもびっくりするほど注目を集めました。おかげで、市民の皆さまへの啓発にもつながったと思います。

一方で、「これで市の財政も助かるね」とおっしゃる市民の方もいるのですが、1,000円、2,000円の物が20個売れてもそれほど大きなインパクトがあるわけではありません。 

それよりも、粗大ごみの収集量が今までよりも1.2倍から1.3倍に膨らんでいるという事実をまず知ってもらうことができたことに大きな意味を感じています。使えるものをわざわざ壊して燃やすのではなくて、 使い回ししたらリユースとなります。これをやるのは、メルカリさんでもいいですし、近所の物々交換でもいいです。そのようなことがどんどん進んでいけば、ごみの発生抑制につながりますし、そこが最大の目標です。 

リユースやリサイクルが文化の一つになっていく大きなきっかけになったのかなと考えています。 

「メルカリShops」内の西宮市のショップ 

 

「メルカリ教室」受講による市民自らのリユース促進 

布施> 粗大ごみの販売だけでなく、「メルカリ」の活用によるリユースの促進を図るため、12月に市民向けの「メルカリ教室」を西宮市主催で開催してもらいましたが、予約で定員(25名×2コマ)がすぐ埋まるほど人気だったようですね。その狙いと背景について教えてください。

石井市長> 不要になった物でもまだ使えて他の人にとって価値のあるものを、自分で「メルカリ」に出品することで、廃棄物を出さない選択肢を持ってもらうことに繋がればと考えました。

この際の「メルカリ教室」の参加者は高齢者が多かったのですが、お時間のある方も多いので、一回覚えて楽しくなれば、ワクチン予約などスマホを使った別の行政サービスへの垣根も低くなるのではと期待しています。

実は自分もこのインタビューの前に「メルカリ」での出品デビューしました。そのままだったらタンスの肥やしになっているようなものが、昨日から今日にかけて5つも売れちゃったんですよね。お小遣いができたことが嬉しいというよりも、家がきれいになったことが嬉しくてですね、自分自身もそうですが、市民にとっても新たな選択肢が増えたと思っています。だから僕もやりますし、市民の皆さまにもどんどんやってもらいたいですね。 

「メルカリ教室」の様子

 

今後は企業との連携で発生抑制(リデュース)に取り組みたい 

布施> ごみ減量やリユースの推進は、西宮市に限らず多くの自治体にとっても課題となっていますが、今後の施策について教えてください。

石井市長> 西宮市を含むこの辺りのエリアには大阪湾のフェニックス計画という計画があります。今度万博をやるところなどはゴミを埋め立てて土地を造っているので、まだゴミを捨てる場所があります。一方で内陸の市町村なんかはもう捨てるところなくて大変ですから、分別を一生懸命やっています。

市民にとってはごみは収集すればおしまいなので、ごみステーションにカラスがいっぱいくるとか、市民の関心がそこで止まってしまいがちですが、最後は燃やしても約15%ぐらいは残ってしまい埋めなければならないという事実を、まず知っていただきたかったです。その上で次どうするのかですが、今一番頑張れないかと考えているのが、ごみの発生抑制です。例えば、豆腐を買う時に豆腐の容器が欲しくて買う人は誰もいません。 将来的にはそのようなプラスチックごみの発生抑制に向け、例えば、生協さんや製品を作っているメーカーさんと話して、もう少し簡易な包装でできないかというのが一つあります。 

また、西宮市は食品工場が多く、昔はお酒や牛乳などの飲料はみな瓶でしたが、最近では缶や紙パックが主流になってきました。 こうしたものにもう一度リターナブルの瓶を使えないかというようなことを話しています。市庁舎内にもウォーターサーバーを設置して、「ペットボトルなしにしよう」みたいな取り組みも行っています。

公共施設内の給水スポット

 

スピード感をもった自律的な組織運営で、官民連携による社会課題解決 

布施> 協定締結や「メルカリShops」を用いた粗大ごみ等の販売について、事後の運用も含め、西宮市さんは、スピード感をもって施策を実現している印象がありますが、その要因は何ですか。

石井市長> 2つ要因があると思います。1つは私が市長になる以前から西宮市は環境学習都市を宣言しており、市内の環境関連施設や自然のフィールドを活用して多様な環境学習を学校や地域で推進して来たという素地があることです。

もう1つは、私が市長になってから、環境の課題に頑張って取り組んでいくために、環境政策推進会議という全庁的な組織を立ち上げたことです。そんな旗印もあり、また予算措置も必要ないので、今回、市長、副市長にいちいち伺いを立てなくても、自律的にスピード感をもって環境部署が実現できたのだと思います。

布施> 自治体にとって、企業を含む民間との官民連携によって社会課題を解決していくことが、今後ますます求められると思いますが、どのように考えますか。

石井市長> 市役所の職員さんは全部自分たちでやらなきゃいけない、みたいなところがあるのですが、やはり餅は餅屋だと思います。特に、最近の企業は、社会的な責任を果たさないと企業として存続できないみたいな考えもありますよね。公共は行政だけが担っているわけではなく、企業やNPOなども役割を果たしており、例えば、児童相談所のように行政にしかできない領域がある一方で、保育所は民間でも運営できます。

市民からしてみたら、行政だろうが民間だろうが、自分たちにとってプラスであればよいので、社会的な課題の解決に繋がるのであれば、大いにお互い連携していくべきだと思います。西宮市は、尼崎市や芦屋市、神戸市、伊丹市、宝塚市などと近く、行政単位としては分かれてるけど、市民の実感からするとこの生活領域はほぼ同一圏内で、西宮市役所だけで全部やるということではなく、他の自治体と一緒にやろう、広域で連携しようという意識を持つようにもしてます。

石井 登志郎 西宮市長

 

2023年は環境学習都市宣言の取り組みをバージョンアップ 

布施> 2023年、西宮市はどのようなことに取り組んでいく予定ですか。 

石井市長> 2023年は西宮市政にとって、環境学習都市宣言が20周年、文教住宅都市宣言が60周年という節目の年にあたります。

実は、関空から大阪、尼崎までの海岸べりはコンクリートで埋められており、西宮市まで来てやっと甲子園浜と御前浜という砂浜が出てくるんです。西の神戸方面へ行っても、須磨まで砂浜がありません。なぜ砂浜が守られたかというと、60年くらい前にコンビナートを造ろうとしていたんですが、当時の市民が大反対したんですね。その時に、西宮は工業都市を目指すのではなく、大阪や神戸に通勤する人たちの憩いのまちとして、子育てするようなまちにしよう、だからここは残そうということになりました。甲子園浜は、当時の環境庁(現 環境省)が、渡り鳥たちが羽を休めるところということで鳥獣保護区に指定しています。

2023年は、その節目の20周年にあたる環境学習都市宣言の取り組みをバージョンアップさせたいと考えており、現状では小学生止まりになってしまっている施策を、中学生や高校生、それから大人の環境学習へと広げて、それが市民のリユースやリデュースといったアクションにつながっていくようにしたいと思います。

阪神淡路大震災で、もともと地震や防災に対する市民の意識が高いのですが、そのような防災活動などの地域の取り組みにあわせて、環境活動にも地域で楽しく取り組んでもらいたいですね。

布施> リユースの促進のため、引き続きメルカリも協力させていただきますので、ぜひ一緒に頑張りたいと思います。本日はどうもありがとうございました。 

布施 健太郎

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プロフィール

石井 登志郎(Toshiro Ishii)

兵庫県西宮市長(第14代)。1971年5月29日生まれ。元衆議院議員(1期)。兵庫県芦屋市生まれ。世田谷区立船橋小学校、早稲田中学校・高等学校、慶應義塾大学総合政策学部卒業。神戸製鋼所に就職。アメリカ合衆国ペンシルベニア大学大学院に留学し公共政策学修士号を取得。帰国後は日本総合研究所副主任研究員を経て、参議院議員の政策担当秘書。2009年の第45回衆議院議員総選挙に兵庫7区から出馬し初当選、1期務める。2018年4月、市長の辞職に伴い前倒しで行われた西宮市長選挙に立候補し初当選。2022年4月より2期目再任。

 

インタビュワー

布施 健太郎(Kentaro Fuse)

メルカリ経営戦略室政策企画マネージャー。1972年生まれ。大学卒業後、百貨店に勤務。その後、衆議院議員の政策担当秘書を経て、市議会議員、県議会議員として地方自治に従事。介護会社の立ち上げや病院の事務責任者・開発担当等を経て、2019年4月株式会社メルカリに入社し、政策企画チームで主にキャッシュレスに関する政府の政策を担当。2021年4月よりグループ会社の株式会社ソウゾウにて「メルカリShops」の立ち上げに参画、2022年2月より同社政策企画マネージャー、同年10月より現職も兼務。東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻修士課程修了。宅地建物取引士、日本ソムリエ協会認定ソムリエ、ホームヘルパー2級などの資格も持つ。