新年あけましておめでとうございます。
今年もメルカリ政策企画ブログ「merpoli(メルポリ)」をよろしくお願いします。
2022年もメルカリ政策企画として、さまざまな政策テーマに取り組んでいきますが、2021年の振り返りと2022年の活動方針などについて、メルカリ執行役員VP of Public Policyの吉川徳明(以下、吉川)と、merpoli編集長の高橋亮平(以下、高橋)でディスカッションをしました。
2021年も政策企画は様々な仕事を行ってきました
高橋> 新年あけましておめでとうございます。昨年のmerpoliの新年最初の記事で小泉さん(小泉文明 メルカリ取締役会長)と吉川さんの対談を通じて2021年の抱負や見通しについて語ってもらいました。昨年は、政策面では、デジタルプラットフォーム(DPF)消費者保護法の成立や、資金決済法、個人情報保護法割賦販売法の改正もありました。政策企画の視点で振り返ると、どういう1年だったでしょうか。また、2022年、政策企画として、どういう方向に向かっていきたいですか?
吉川> 2021年は、緊急事態宣言が見込まれていたこともあり、年始からその準備に追われて始まった1年でした。関係する政策テーマでいうと、メルカリをはじめとした、多くのIT企業に影響があるDPF消費者保護法に関しては、法案の検討、法案成立後の詳細設計の検討など、1年を通して関わってきました。また、割賦販売法や個人情報保護法、資金決済法など、メルカリやメルペイの各事業に大きな影響のある法改正などもありました。昨年から発足した菅政権のもとで、デジタル庁を通じた公的セクターのDXに関連する検討が大きく進展した1年でもありましたし、岸田政権発足後は、新しい資本主義、経済安全保障、DFFTなどの新しいテーマも出てきました。2022年、こうしたテーマにどう関わっていくのかを考えていくかが重要だと考えています。
メンバーも増えチームが大きくなった2021年
高橋> 2021年はメルカリ政策企画に新たな仲間を多く迎えた1年でもありました。
吉川> 転職や異動を通じて新たに政策企画チームに参加していただいた方も多かったですし、4月に岐阜市から3人目の派遣研修者を迎え、7月からは独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)からも派遣研修者を迎えました。また、政策企画初のインターンとして浅野さんも新たな仲間に加わっていただきました。これに伴って、政策企画チーム全体でオンボーディングの仕組み化なども進んだ点は良かったと思います。これまでの政策企画チームというと、それぞれが持つ経験や能力など属人的に仕事をすることが多かったように思います。例えば、IT企業の政策企画業務という点では数年経験すれば慣れる面もありますが、未経験で参加いただく方も増えてくるなか、専門性を持ったメンバーが属人的に仕事するだけでなく、どう経験・ノウハウ・判断基準を形式知化・組織化させていくかに多くの時間を割きました。まだ課題も多くありますが、専門性を持ったメンバーが日々の業務に当たりながら、並行してノウハウの蓄積が進むような仕組みをもっと整えていきたいと思っています。
吉川徳明 メルカリ執行役員VP of Public Policy
経営者たちが公共政策などをより意識するようになった1年だった
高橋> 2021年は4月にmerpoliで、マネーフォワードでChief of Public Affairsに就任した瀧さんにインタビューしましたが、多くの企業がPublic Policy/Public Affairsの分野に人材を配置するようになった1年だったとも思います。最近は、スタートアップにおいてもかなり早いステージから公共政策分野に関心の強い経営者の方々も増えているようになりました。その辺りはどう感じていますか。
吉川> 確かに、この1年、本当に多くの企業からPublic Policy/Public Affairsの部署を立ち上げたい、または立ち上げたということでご相談をいただきました。相応の規模の企業で新たに部署を立ち上げる企業もあれば、かなり初期段階のスタートアップ企業もあるなど、多様な企業で政策企画という仕事が必要となりつつあると感じました。また、昨年は、IT分野を中心に各企業の経営者が政策への関心が高まった1年だったとも感じました。デジタル庁の発足が大きな影響を与えているとも思いますし、デジタルの日には、Zホールディングスの川邊さん(川邊健太郎 Zホールディングス代表取締役社長Co-CEO)と進太郎さん(山田進太郎 メルカリ代表取締役CEO)の対談が行われるなど、各社の枠を超えて、日本のデジタル化に日本のIT各社がコミットし始めたという大きな変化を感じた1年でもありました。このような大きな変化の中で、政策企画という役割を再定義して、メルカリ政策企画が日本社会の中でどのような役割を担っていくのかが2022年のテーマになると思っています。
高橋> デジタル庁の話が出ましたが、政治側のITやデジタルに対する位置付けも随分変わりましたよね。昨年1月にDXについて話をしましたが、かつての「ITのことはITの人が」という状況からは大きく変わり、IT分野以外の経営者も発言するようになりましたし、総理をはじめ政治関係者、省庁関係なく各政策議論においても、デジタルという議論が当たり前のようになされるようになってきたようにも感じますし、自治体のDXやデジタルへの意識も高まってきているように思います。
個人的に2021年にやったことを振り返ると、前半は「メルカリ寄付」の仕組みを広めようと取り組み、寄付先は88団体まで増やすことができ、自治体の参加も17自治体になりました。
高橋亮平 メルカリ会長室政策企画参事 兼 merpoli編集長
より多様な役割が果たせる政策企画にしていきたい
吉川> こちらのメルカン記事でも語ったことですが、政策企画の担う役割を広げようとした1年、また実際に広がった1年でした。メルカリ寄付、神山まるごと高専(仮称)への寄付、岩手県山田町との連携など、いかにメルカリグループのサービスを通じて社会課題の課題に貢献するか、という取り組みも広がってきました。
高橋> 2021年後半は、「メルカリShops」がリリースされ、政策企画では、EC化によってコロナ禍で疲弊する地域経済の活性化をめざし自治体連携なども進めました。DX自体はコロナ禍の2020年から言われていたことでしたが、2021年はIT以外の分野のDXが進んで年であったように思います。2018年のmerpoliを開設した直後に上海視察を踏まえてOMO(Online merge Offline)の記事を書いたのですが、2022年は、このOMOなども意識する1年になるのではないかと思ったりしています。オンラインでの顧客行動をオフラインのリアル店舗などで活かすO2O(Online To Offline)は一方向の誘導だったのに対して、OMOはオンラインとオフラインの融合ということですが、とくにこれまでオンラインと関わりのなかったような分野やオフラインが主流の分野との融合が進むのではないかと思っています。メルカリにも子会社としてメルロジが設立され、メルワークも始まりました。こうした分野との政策企画の連携には可能性があるのではないと思っています。
吉川> 昨年末に、2022年の活動の方向性について政策企画のみなさんと議論しました。昨年始まった「メルカリShops」の成長をさらに後押しする、新たに設立された「メルロジ」や「メルコイン」の新規事業を後押しする、国際展開のサポートも本格化していくなど、新たに挑戦すべきテーマも多くあります。また、これまで取り組んできた分野においても、消費者保護・利用者保護のさらなる強化、OMOやオフラインも含めたCircular Economyの推進や「修理する権利」の日本での検討、全銀システム改革やCBDCなどをめぐる検討、寄付や自治体連携など、重要案件が多くあります。
高橋> 政策企画の価値と可能性は年々高まっているように感じますし、今年も昨年以上に忙しくなってきそうですね。merpoli読者の皆さんにも引き続き、merpoliとメルカリ政策企画をよろしくお願いします。
後編へつづく
-----------------------------------------------------------------------------------------------------
吉川 徳明 (Noriaki Yoshikawa)
メルカリ執行役員。2006年、経済産業省入省。商務情報政策局でIT政策、日本銀行(出向)で株式市場の調査・分析、内閣官房でTPP交渉などに従事。2014年からヤフー株式会社に入社、政策企画部門で、国会議員、省庁(警察庁、総務省、金融庁等)、NGO等との折衝や業界横断の自主規制の策定に従事、2018年4月、政策企画参事としてメルペイに参画、同8月にマネージャー、2020年3月にディレクター、2021年7月に現職。
高橋 亮平(Ryohei Takahashi)
メルカリ会長室政策企画参事 兼 merpoli編集長。元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、 神奈川県DX推進アドバイザー、国立大学法人滋賀大学講師。松戸市部長職、千葉市アドバイザー、東京財団研究員、政策工房研究員、明治大学客員研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」に選出。著書に「世代間格差ってなんだ」(PHP新書)、「20歳からの教科書」(日経プレミア新書)、「18歳が政治を変える!」(現代人文社)ほか
関連記事