ワークショップ企画書の最終選考はいかに!?ーIGF/MAG・2019年第3回会合ー 

2019年6月5日から7日にかけて、ドイツ・ベルリンの連邦経済エネルギー省(BMWi)にて、国連傘下のインターネットガバナンスフォーラム・マルチステークホルダー諮問グループ(IGF/MAG)2019年第3回会合が開催されました。

今回の会合は、2019年11月にドイツ・ベルリンで開催される第14回IGFに向けた準備、とりわけ世界各国の関係者から提出されたワークショップ企画書の最終選考を目的としたものでした。政策企画の望月(以下、筆者)は、MAG唯一の日本委員として今次会合に出席してきましたので、ご紹介します。

なお、今次会合のアジェンダについては、こちらをご覧ください。また、MAGの詳細につきましては、こちらをご覧ください。

f:id:merpoli:20190626124718p:plain

 

2019年IGF/MAG第3回会合・結果概要

(1)オープンコンサルテーション

6月5日、IGF/MAG第3回会合の初日は、オープンコンサルテーションに割り当てられました。これは、本会合に参加しているさまざまな利害関係者・コミュニティから意見を聞く場で、基本的には、MAG議長やIGF事務局、国連事務局経済社会局(UNDESA)や今年のIGF開催国であるドイツ政府等から、今年のIGF開催に向けた進捗状況や会期間活動(intersessional activities)の進捗状況等について報告を行い、一般参加者からの意見を聞くためのものでした。

冒頭、UNDESAのDeniz Susar氏より、来年2020年IGFの開催国がポーランドに決定したことが正式に発表されました。これにより、2017年スイス、2018年フランス、2019年ドイツ、そして2020年ポーランドと、欧州各国が4年連続でIGFを開催することになったため、MAG委員を含む会合の出席者から懸念が示され、2021年以降は他の地域でIGFを開催すべきといった声が相次ぎました。

また、現在進行中のMAG委員選挙並びにMAG議長選挙についても、6月30日の期限までに候補者を推薦して欲しい旨の発言がありました。さらに、Antonio Guterres国連事務総長が2018年7月に設置した「デジタル協力に関するハイレベルパネル(High-level Panel on Digital Cooperation:HLPDC)」の最終報告書が6月10日に国連事務総長に提出されることについても、改めて共有されました。

なお、午後には、ドイツキリスト教民主同盟(CDU)のThomas Jarzombek議員から今年のIGFに関するスピーチがあり、その後、国別・地域別イニシアチブ(NRIs)に関するIGF事務局の報告や、インターネットガバナンスに関係が深い国際機関等からのステートメント等が行われました。

f:id:merpoli:20190626124752p:plain

 

(2)ワークショップ企画書の最終選考とその他のセッションに関する議論

6月6日(2日目)から7日(3日目)にかけて、本格的にMAG委員間での議論が行われました。

UNDESAのDeniz Susar氏より、今年のIGF開催国であるドイツ政府からは、前日のオープンコンサルテーションを踏まえた発言に続いて、今年のIGFにおけるハイレベルセグメント、議員セッション、そしてオープニングセッション等について、それぞれの進捗状況について報告がありました。

その後、まずはIGFの会期間活動の一つであるベストプラクティスフォーラム(BPFs)の進捗状況について、各担当のMAG委員から報告があった後、本第3回会合の主題であるワークショップ企画書の最終選考の議論が始まりました。

まず、MAG委員が3つのプログラムテーマ(①データガバナンス、②デジタルインクルージョン、③安心、安全、安定およびレジリエンス)に分かれて選考を行っている関係で、それぞれのチームのコーディネーターより、これまでの検討の経緯と、20件のワークショップ企画書を選出した理由、条件付き採用とすべきワークショップ企画書や合同開催とすべきワークショップ企画書、さらにはそれぞれのプログラムテーマのナラティブについて報告がありました。議論の中では、今回の企画書は多様性を欠いているものが多かったといった発言や、それを改善する方法としてアカウント情報の更新や登壇候補者(リソースパーソン)リストの更新が必要であるといった発言がありました。

3つのプログラムのコーディネーターからの報告が終わった後、「トッピングとテイリング(toppinng and tailing)」アプローチについて話し合われました。これは、それぞれのプログラム毎に、初日に「開会セッション(introductory sessions)」を、最終日に「閉会セッション(concluding sessions)」を開催することによって、IGF期間中に開催されるワークショップをいわば挟むアプローチです。このアプローチについてはMAG委員からさまざまな意見があり、筆者からは、「『閉会セッション』がDay 4 の11時10分から開始されることになっているが、その直前にもワークショップがあり、それらの開催者または報告者からどのようにして報告を受けるつもりなのか?当該開催者または報告者にとって過度な負担とならないか?」と発言したところ、「閉会セッション」がDay 4の午後に開催されることになりました。「開会セッション」についても議論が行われ、それぞれMAG委員が提案を出すことになりました。

原則としてMAG委員が開催を提案し、最も大きな会場で6言語(国連公用語)の通訳付で開催されるメインセッションについても議論が行われました。この点、筆者から、「『IGFビギナーズ・メインセッション(IGF Beginners Main Session)』に出席する人も『開会セッション』に出席できるようにすべき」と発言したところ、IGF事務局から、「IGFビギナーズ・メインセッション」を前倒しし、同セッションの参加者も「開会セッション」に出席できるようにするとの回答がありました。

メインセッションの内容については、クライストチャーチモスク銃乱射事件を取り上げる提案や、ドイツ政府から分野横断的なセッションの提案等がありました。この点、ドイツ政府から、G20の成果を披露するようなメインセッションも一案との発言がありましたので、筆者から「ドイツ政府の発言、すなわち、G20の成果を披露するようなメインセッションを支持する」と発言しました。この他、「トッピングとテイリング(toppinng and tailing)」セッションをメインセッションにすべきといった意見がありましたが、これについては異論が上がりました。持続可能な開発目標(SDGs)に関するメインセッションを支持する旨の発言が相次ぎましたが、これはG20の成果を披露するメインセッションにも親和的でしょう。

会期間活動(intersessional activities)の一つであるダイナミックコアリッション(DCs)や国別・地域別イニシアチブ(NRIs)のメインセッション、そしてDay 0のイベントについても議論が行われた後、主に政府や国際機関等が開催するオープンフォーラムに議論が移りました。IGF事務局からは、現状21件の開催枠があり、政府に優先的に与えられるが、プログラムテーマに沿っていること、そして地理的配分が重要であることが示されました。その上で、特定の国際機関・団体等の企画書につき、国別・地域別イニシアチブ(NRIs)との合同開催を提案する発言がありました。

f:id:merpoli:20190626124834p:plain

(© United Nations Internet Governance Forum)

 

(3)メインセッションに関するブレイクアウトセッション

6月7日、最終日はメインセッションの議論から始まりました。前日までの提案を整理しリストアップした文書がドイツ政府から共有され、それぞれのトピックについて議論が行われました。筆者からは、「デジタルガバナンスとデジタル貿易(Digital Governance and Digital Trade)」をテーマとするメインセッションを支持するとともに、持続可能な開発目標(SDGs)についても広く全てのセッションに反映されるべきだと発言しました。

その後、それぞれのトピックを整理した上で6つのカテゴリーに分けられ、それぞれのメインセッションのテーマに関心のあるMAG委員が参加する形で、ブレイクアウトセッションが行われました。筆者はドイツ政府とともに、「デジタルガバナンスとデジタル貿易(Digital Governance and Digital Trade)」に関するGroup 3に参加し、スムーズにメインセッションのタイトルと概要をまとめることができました。その後、6つのグループそれぞれから報告が行われました。

最終日はこの他さまざまな議論が行われた後で、今後の作業についてはMAG委員間の定例国際電話会議で継続されること、そして今後の取り進め方等につき議論が行われました。

f:id:merpoli:20190626124904p:plain

 

むすびにかえて

今年のIGF/MAG対面会合は今回で終了、残すところIGF本番のみとなりましたが、メーリングリストや定例国際電話会議を通じて議論しなければならない事項はまだまだ多く残っています。筆者は、MAG委員としてこうした議論に今後も参加していかなければなりませんが、とりわけ「デジタルガバナンスとデジタル貿易(Digital Governance and Digital Trade)」のメインセッションについて、ドイツ政府が入ってくれてはいるものの、グループメンバーが少ないため、率先して組み立てていかなければならない可能性があります。このメインセッションは、今年G20議長国を務めている日本にとっても重要なトピックの一つを取り扱うものですので、何かG20の成果をしっかりと披露できるような形にできればと思っています。

IGFは意思決定を行う会議体ではありません。しかし、実際に政府や国際機関等のハイレベルが参加している事実を踏まえ、IGFでの議論が国や国際機関等の意思決定につながる、あるいは意思決定に影響を与えうる潜在能力を秘めています。であるからこそ、例えばEUはIGFや国別・地域別イニシアチブ(NRIs)を積極的に活用しようとしていますし、「インターネットと管轄政策ネットワーク(Internet & Jurisdiction Policy Network)」のように、特定の団体がIGFでの議論やネットワーキングの成果をより具体的な政策課題の解決策につなげようとする動きもあります。IGFは、国連の下で、毎年2,000人から3,000人を超える関係者が参加し、さまざまなインターネットに関する政策課題を議論する世界最大のフォーラムですから、参加することに意味があるか否かといった議論は不毛であり、むしろこの貴重な機会をどのように活かすのかを考えることこそが重要です。

メルカリはテックカンパニーとして世界を目指している企業です。その実現のためにも、国際的なポリシーやルールメイキングに今後も積極的に参画していきます。

(望月 健太)

f:id:merpoli:20190626124925p:plain

 

Twitter:

 

Facebook: